日経新聞読み方講座【初級編②】『日本国内の景気指標を知ろう』
伊藤亮太(いとう りょうた) 現在、スキラージャパン株式会社取締役副社長。 CFPR、DCアドバイザー、証券外務員資格保有。 慶應義塾大学大学院商学研究科(専門は社会保障・年金)修了後、証券会社の営業・経営企画部門等を経て2007年11月、「スキラージャパン株式会社」を設立。個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行うと同時に、企業やオーナーに対する経営コンサルティング、相続・事業承継設計・保険設計の提案・サポートを主に行っている。 また、CFPR認定者として、FP受験講座等の講師として活躍するかたわら、大学等で金融や資産運用、年金、保険などの講演も行っている。著書として、『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)などがある。 公式サイト|伊藤亮太ファイナンシャルプランナー http://www.ryota-ito.jp |
前回に続き、日経新聞読み方講座第二弾。今回は、景気指標部分から「日本国内の指標」について解説していきたいと思います。日本経済新聞朝刊では、毎週月曜日(祝日の場合には翌日火曜日)の16面あたりに【景気指標】が掲載されています。【景気指標】の左部分には『国内』と記載のある部分があります。ここには、日本の重要な景気指標・経済指標が掲載されています。この部分を見ることで、現状日本の経済状況はどうなのか、過去と比べてよいのか悪いのか、どんな産業が調子が良いのかなどを把握することができます。初級編ですので、細かい部分は省いて、主な掲載内容とその指標の意味について解説します。
■日本国内の景気指標解説
景気指標「国内」部分を見ると、数多くの指標が掲載されています。ここではその中でも、是非皆様に見ていただきたい主な指標<その1>について解説します。
<【景気指標】国内景気指標に記載されている主な指標>
●国内総生産
景気指標の一番左上に、「国内総生産」が掲載されています。国内総生産とは、「ある地域で、ある一定期間に生み出された付加価値の総額」を示します。簡単に言えば、通常1年間で、最終的に国内で産み出されたものを合計したものを意味します。
国内総生産はGDPともいわれ、各国の経済の規模を比較する際にも用いられます。わが国の場合、世界第三位の規模を誇っています。
2012年8月6日(月)16面を見てみると、名目と実質という2つの種類のGDPが記載されています。名目と実質の違いは、物価を反映しているかどうかです。物価を考慮して算出されたのが実質GDPになります。例えば、新聞を見ると、2011年度の名目GDPは469.9兆円、実質GDPは511.1兆円となっています。実質GDPの方が大きくなっています。これは、2005年基準において8~9%のデフレが生じているためと想定されます。また、469.9(▲2.0)というように、( )で記載の部分があります。これは、前年度に比べて何%増減したか(例だと2.0%下落)を表しています。この増減率は、経済成長率と呼ばれています。
その他、2011年度以降のGDP部分を見てみると、※印の記載があります。※印は、速報値を示しています。その後、確定値が公表され次第、数値は変わることになりますが、株価などには速報値が影響を受けることになります。
<2011年度のGDP(出所)内閣府>
名目469.9(▲2.0) 実質511.1(▲0.0)
<2012年1~3月>
名目475.1( 4.9) 実質518.0( 4.7)
<ポイント>
名目>実質・・・インフレが生じていることが分かる
実質>名目・・・デフレが生じていることが分かる>
●消費支出2人以上世帯前年比
GDPの動きと似たような動きに、「消費支出2人以上世帯前年比」があります。これは、景気指標の第三段目の部分に掲載されています。GDPの増加率(経済成長率)は、景気が良いほど高くなる傾向にありますが、消費支出2人以上世帯前年比も景気動向に左右される側面が強いため、同じような動きになると想定されます。
また、GDPを支出面から捉えると、わが国のGDPの6割前後を消費が占めているところからも、消費支出の動きはGDPと相関性が高いといえます。実際に並べてみてみると、例えば2010年度の消費支出は対前年比で0.3%増に対し、2010年度の名目GDPは1.1%増。2011年度の消費支出は対前年比で2.2%減に対し、2011年度の名目GDPは2.0%減。かなり似たような動きとなっていますよね。直近の数値ですと、消費支出は2012年4月+2.6%、5月+4.0%、6月+1.6%。前年と比べると底堅い動きとなっています。これは、GDP統計にも反映されることになるでしょう。つまり、前年よりも経済規模は大きくなっており、今年は悪くない年であると判断することができるわけです。
<消費支出2人以上世帯前年比(出所)総務省>
2010年度 0.3 (2010年度の名目GDPは+1.1%)
2011年度 ▲2.2 (2011年度の名目GDPは▲2.0%)
2012年1月 ▲2.3
2012年2月 2.3
2012年3月 3.4
2012年4月 2.6
2012年5月 4.0
2012年6月 1.6
今回は、景気指標部分の「国内総生産」及び「消費支出2人以上世帯前年比」を見てきました。わが国のGDPの規模は、名目で470兆円前後、実質で510兆円前後です。これだけの規模をもつ国は世界でも数えるほどしかありません。ただ、残念なことに、GDPは伸び悩んでいるのが現状であり、経済成長率は芳しくありません。
また、GDPと似たような動きとなるものとして、消費支出を挙げました。この動向を見れば、家計の財布のひもがゆるくなっているのがどうかの判断ができます。また、国全体としての経済がどのような方向に動きそうかも流れは掴むことができるといえます。まずはこの2つの指標を新聞で見てみましょう。
本コラムは、スキラージャパン株式会社ホームページ『FPコラム』に掲載したものを手直ししたものになります。
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