為替の動く時期・傾向とは?
伊藤亮太(いとう りょうた) 現在、スキラージャパン株式会社取締役副社長。 CFPR、DCアドバイザー、証券外務員資格保有。 慶應義塾大学大学院商学研究科(専門は社会保障・年金)修了後、証券会社の営業・経営企画部門等を経て2007年11月、「スキラージャパン株式会社」を設立。個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行うと同時に、企業やオーナーに対する経営コンサルティング、相続・事業承継設計・保険設計の提案・サポートを主に行っている。 また、CFPR認定者として、FP受験講座等の講師として活躍するかたわら、大学等で金融や資産運用、年金、保険などの講演も行っている。著書として、『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)などがある。 公式サイト|伊藤亮太ファイナンシャルプランナー http://www.ryota-ito.jp |
2011年10月31日のオセアニア外国為替市場で円相場が一時1ドル=75円32銭をつけ、戦後最高値を更新しました。その後、急激な円高に伴う措置として、政府・日本銀行は為替介入に踏み切ったわけですが、私たちが為替に投資を行う場合、動く時期・傾向を把握しておくことは非常に重要といえます。もちろん、その時々の世界経済情勢により変化しますが、アノマリーと呼ばれる為替が動く時期・傾向がありますので、ここではそのご紹介をしたいと思います。
■過去の傾向を追うと
過去の傾向を追うと、面白い為替の動向があります。下記にまとめておりますが、日本企業の決算期(特に3月期)には海外の子会社から配当等による国内への資金還流に伴い、ドルなどの外国通貨を日本円に戻す動きがみられるため、円高になりやすいと言われています。また、欧米の企業は12月決算が多いため、日本企業の決算期とは逆の動き、つまりドル高(円安)、ユーロ高(円安)になりやすいと言われています。その他、私たちが海外旅行に行きやすい時期も為替が動く時期と言われています(あくまで傾向ですが)。
- 1月・・・海外旅行に行く人増加し、円安傾向に(5月、8月も)
- 3月・・・日本企業の決算集中に伴い円高傾向に
- 6月・・・欧米企業の四半期決算で、トレンドが反転する傾向に(9月も)
ボーナス支払いによる外貨投資の増加に伴う円安傾向(12月も) - 12月・・ 欧米企業の決算が集中し、米ドル高、ユーロ高になりやすくなる。
なお、クリスマス休暇には、取引量が減るため、動きが鈍くなりやすい
■1月効果説を知っておこう
ここでもう一つ、1月効果説についてお話ししておきましょう。1月効果説とは、1月の月間の相場動向がその年の相場動向を決める、という説です。詳しく言うと、1月最初の営業日の為替レートと月末の為替レートを比較して、円高になっていればその年は円高傾向に、円安になっていればその年は円安傾向になるといわれるものです。
これは、海外の機関投資家、特に欧米のヘッジファンドの動きが反映されていると言われています。欧米では12月決算が主流なため、1月と言えば新年度の始まり。資産の入れ替え等に伴い、その年の動向を決めるといったところでしょうか。
本当にそんなことで傾向がつかめるのか?と思われるかもしれませんが、実は過去35年間の中で8割がこの傾向にあてはまっています。残り2割部分は、年の途中でトレンドを変える大きな出来事が発生(例:1985年のプラザ合意、2007年はサブプライムローン問題etc.)している場合が多いため、為替に与える影響が大きい出来事がない場合には、どうやらこの説は当たるかも?といえそうです。
■日々の動きはどうか?
日々の動きにおける注意点はどのようなことがいえるでしょうか?これも時間帯によって取引が活発な時間と活発ではない時間があります。短期売買の場合には、取引が活発となる時間帯において、値動きが荒くなる場合がありますので、注意が必要といえます。
- 日本時間午前10時前後・・・民間金融機関が決済用のドルを買う時間帯
- 日本時間午後9時~午前0時・・・米国の経済指標発表に伴う価格変動
- 日本時間早朝・・・取引量少なくなる
為替はどうしても取引量の多い、米ドルに関連する指標発表時などに大きく動く傾向があります。そのため、短期売買の場合、日本時間の深夜に発表される米国の経済指標は予想値と実績値のかい離がどれくらいなのかをしっかり把握する必要があります。予想値と実績値があまりにもかい離する場合には、値動きが荒くなるといえます。
その他、日本時間午前10時前後も値が動く時間帯といえます。これは、民間の金融機関が決済用のドルを購入する時間帯でもあり、取引額が大きくなる傾向にあります。また、政府・日銀の為替介入が行われる時間帯も午前9時~午前10時すぎから、といった場合がほとんどかと思われますので、朝の値動きも把握しておく必要があるといえます。
■週末をはさんだ取引は?
- 金曜日の終値と翌月曜日の始値に大きなギャップができる「窓開け」が起きる可能性
それでは金曜日から月曜日にまたがる取引の場合の注意点もお話ししておきましょう。実は、休みをまたぐと株式と同様、為替も大きく動く場合があります。
これは、金曜日の取引終了後に、重要な発表があることも多く、また週末に事件等何か発生した場合などにおいては、対円において数十銭から数円、レートが上下に振れることもあることを意味します。
したがって、短期売買の場合は、通常は週をまたがず、ポジションを閉じる場合が多いといえます。もちろん、私たちが長期投資で行う場合や、今後円安になると想定される場合には売却することなく週をまたがって保有することもあってよいといえます。
以上、簡単ではありますが、月ごとにおける為替の値動きの傾向などを見てきました。為替は当然のことながら外貨建て金融商品(外債、外貨建てMMF、外国株式など)にも影響を与えます。こうした傾向をつかみながら、現在の経済情勢も加味したうえで、投資を行うタイミングを見計らってみてはいかがでしょうか?
来年の1月相場、是非チェックしてみてくださいね。
※当コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的としたものになります。銘柄や金融商品の選択、投資判断の最終決定は、ご自身の判断でなされるようにお願いいたします。
本コラムは、スキラージャパン株式会社ホームページ『FPコラム』に掲載したものを手直ししたものになります。
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