ドル安円高背景と為替投資の方法について
伊藤亮太(いとう りょうた) 現在、スキラージャパン株式会社取締役副社長。 CFPR、DCアドバイザー、証券外務員資格保有。 慶應義塾大学大学院商学研究科(専門は社会保障・年金)修了後、証券会社の営業・経営企画部門等を経て2007年11月、「スキラージャパン株式会社」を設立。個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行うと同時に、企業やオーナーに対する経営コンサルティング、相続・事業承継設計・保険設計の提案・サポートを主に行っている。 また、CFPR認定者として、FP受験講座等の講師として活躍するかたわら、大学等で金融や資産運用、年金、保険などの講演も行っている。著書として、『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)などがある。 公式サイト|伊藤亮太ファイナンシャルプランナー http://www.ryota-ito.jp |
最近、1ドル=70円代が定着しています。果たしてなぜ円高ドル安となっているのでしょうか。その背景について述べるとともに、ここでは紹介程度ですが為替投資にはどんな方法があるのか、お話ししていきたいと思います。
■ドル安が大きな要因となっている
円高ドル安というと、どうしても私たちは円高に目が行きがちですが、今回の状況は米ドル安が進んでいるため円高となっているというのが正しい考え方といえます。つまり、米国の景気が悪い方向に向かっているのでは?という景気減速懸念が高まっていることが背景にあります。
円とドルの関係で見た場合、米国の景気減速懸念は米ドルが売られるためドル安円高となります。それまで株式などリスク資産に向かっていたマネーが、資金の逃避先として円に流れているため、円高となっているのです。具体的に言えば、日本円やスイスフランといった通貨は安全な投資先として認識されていることから、景気が悪くなったりした場合には、通貨は日本円やスイスフランが買われるために円高になっているといえます。
ちなみにスイスではこの8月に三回も金融緩和政策を実施しており、自国の通貨(スイスフラン)が高くなることを防ごうと躍起になっています。その結果、最後に逃避先として選択されたのが日本円ということもあり、様々な通貨に対して円高が進んでいる側面もあります。
■円はなぜそんなに安全と言われるのか?
それではなぜ円は安全な投資先として考えられているのでしょうか。一般的に、通貨の信用力を見るにあたっては、海外にどれだけ多くの資産を持っているか、つまり対外純資産がどれだけあるかが大きく影響するといわれています。日本は2010年末段階で251兆円もの対外純資産を保有しており、世界最大となっております。 したがって、円は信用力が高い通貨とみなされ、安全な投資先とされているため、米国の景気減速懸念、ヨーロッパの財政問題等を考慮すると、現状においては円が買われる傾向にある=円高となるといえるのです。
■その他円高になりやすい状況として
その他、円高になりやすい状況がある点もお話ししておきましょう。景気減速懸念が強まっている点を何とかしたいのは欧米諸国ではどこも同じです。自国の通貨安が続けば、輸出にはプラスとなるため、景気をよくする方法の一つとして輸出による稼ぎが多い国においては、自国通貨安が続いてほしいという思惑はあると考えられます。
欧米諸国では、景気減速に歯止めをかけるためにも、現在の通貨安の流れは続いてほしいといった本音もあるといえます。そのため、自国経済の下支えには、自国通貨安をよしとする背景があるのです。 その結果、各国が協調して介入を行うといった手段は行われにくいといえます。日本が8月4日に行った通貨介入が単独介入であったのはそうした各国の思惑があったことも影響しているものと思われます。
■円安ドル高の流れにはどうしたら反転するか?
それでは、現在の円高ドル安傾向はいつになったら円安ドル高へ流れが変わるのでしょうか。大きくいえば、下記の2つの点がどうなるかによるといえます。
- ①世界景気の回復が力強いものとなるとき
特にアメリカに関して景気回復が着実にみられるときには、ドルが買われて円安ドル高へ反転することになるでしょう。また、世界的に景気が良い方向に回復していけば、 リスクマネーが円やスイスフランといった安全資産から高金利の通貨に流れていくと考えられますから、高金利の通貨高円安という流れができるといえます。 - ②米国金利が上昇するかどうか
日本の金利が一定で、米国金利が上昇すればドル高円安となります。一般的に、景気回復につれ、米国の金利のほうが日本の金利よりも高くなる傾向が強く、また金利上昇のスピードも米国の方が早いといえるため、米国金利上昇が円安ドル高への流れのカギといえます。
■為替投資の方法
現状を考えると、ドル/円においては円が史上最高値に近い状況ですから、ドルに投資をして円安になった時に売却することで為替差益を得ようと考えておられる方も多いと思います。為替に投資をする方法には様々ありますが、一般的な投資方法としては下記のようなものがあります。
ここでは紹介程度にとどめますので、実際の投資を考えるにあたっては証券会社のホームページなどを参考にされてみてください。
注意しなければならない点は、
- ①各国の通貨を購入し、手元に保管しておく
- ②外貨普通預金、外貨定期預金にて外貨を預金する
- ③外国債券(外債)を購入
- ④外貨建MMFを購入
- ⑤外国株式を購入
- ⑥外国債券や外国株式、通貨などに投資する投資信託を購入
- ⑦FX(外国為替証拠金取引)
以上、簡単ではありますが、為替についてみてきました。経済を学ぶことは為替の動向をつかむことも可能とします。また、大きな流れがつかめれば、外債や外貨建MMF、FXなどの投資手法で為替差益を得ることも可能となります。 もちろん、金利収入(もしくは金利差収入)を得ることも可能です。利息がなかなかつかない昨今、こうした外貨投資もポートフォリオに組み入れてみると、ご自身の投資パフォーマンス向上につながるかもしれませんね。
※あくまで私的意見です。投資はご自身の判断にて行ってください。
※当コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的としたものになります。銘柄や金融商品の選択、投資判断の最終決定は、ご自身の判断でなされるようにお願いいたします。
本コラムは、スキラージャパン株式会社ホームページ『FPコラム』に掲載したものを手直ししたものになります。
FPコラム一覧メニュー
- 第1回『授業料無償化と子ども手当で学習費はまかなえるか?』
- 第2回『生命保険加入と見直しのポイント!』
- 第3回『プロ野球を応援しよう!面白い定期預金のご紹介』
- 第4回『環境に関心を持とう!エコ定期預金のご紹介』
- 第5回『魅力的なETF商品が増加中!「金の果実シリーズ」とは?』
- 第6回『高金利が魅力!?ブラジル・レアル建ての外貨預金と債券を検証』
- 第7回『何か当たるかも!?面白い定期預金のご紹介』
- 第8回『子育て世帯ご注目!子育て支援定期のご紹介』
- 第9回『邦銀初!投資信託の申し込み手数料完全無料化』
- 第10回『JASDAQ-TOP20がJASDAQ市場に上場!』
- 第11回『今年は要注意!金券が紙切れに?』
- 第12回『名産品がもらえる!ご当地定期預金のご紹介』
- 第13回『学生限定!学生専用口座・専用普通預金のご紹介』
- 第14回『大震災義援金のお願いと災害情報について』
- 第15回『豪州リートが日本で購入可能!分配金も期待できるかも』
- 第16回『全国で続々登場する震災復興支援定期のご紹介』
- 第17回『ドル安円高背景と為替投資の方法について』
- 第18回『エコ関連のローンが最近話題に!?』
- 第19回『為替の動く時期・傾向とは?』
- 第20回『第1回「個人向け復興国債」のご案内』
- 第21回『缶詰1個から参加できる寄付活動に参加しよう!』
- 第22回『初任給ってどのくらい?』
- 第23回『節電にチャレンジすることでお金も貯まる?そんな預金があるんです』
- 第24回『JCBカード保有者必見!トッピング保険の提供開始!』
- 第25回『楽天銀行の新型定期は金利が最高年1.1%』
- 第26回『日経新聞読み方講座【初級編①】「マーケットの用語と意味を知ろう」』
- 第27回『日経新聞読み方講座【初級編②】「日本国内の景気指標を知ろう」』
- 第28回『スマホでCMを見てポイントゲット!』