初任給ってどのくらい?
伊藤亮太(いとう りょうた) 現在、スキラージャパン株式会社取締役副社長。 CFPR、DCアドバイザー、証券外務員資格保有。 慶應義塾大学大学院商学研究科(専門は社会保障・年金)修了後、証券会社の営業・経営企画部門等を経て2007年11月、「スキラージャパン株式会社」を設立。個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行うと同時に、企業やオーナーに対する経営コンサルティング、相続・事業承継設計・保険設計の提案・サポートを主に行っている。 また、CFPR認定者として、FP受験講座等の講師として活躍するかたわら、大学等で金融や資産運用、年金、保険などの講演も行っている。著書として、『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)などがある。 公式サイト|伊藤亮太ファイナンシャルプランナー http://www.ryota-ito.jp |
就職活動も本格化してきたこの時期、学生の皆さんは『やりたい仕事に就く』を第一目的にしながらも、実際のところは『給料』もどのくらいなのか気になるところだと思います。当然、企業の規模や業種、経営方針などによって様々ではありますが、ここでは各産業ごと、学歴ごとの初任給が平均してどのくらいなのか調べてみました。学生さんだけでなく、保護者の皆様にとっても関心事になるかと思います。是非ご一読していただけたらと思います。
■初任給はじわりじわりと上がってきている!?
厚生労働省『平成23年賃金構造基本統計調査(初任給)』によると、昨今の景気・経済情勢とは裏腹に、初任給に関してはじわりじわりと上昇してきている模様です。特に昨年は初任給(※1)の伸びが大学卒全体で2.3%アップしており、20万円台に到達しました。
<表1:学歴別初任給の推移(男女計、単位:千円)>
修士課程修了 | 大学卒 | 高専・短大卒 | 高校卒 | |
平成19年 | 225.0 | 195.8 | 168.5 | 155.7 |
平成20年 | 225.9 | 198.7 | 169.7 | 157.7 |
平成21年 | 228.4 | 198.8 | 173.2 | 157.8 |
平成22年 | 224.0 | 197.4 | 170.3 | 157.8 |
平成23年 | 234.5 | 202.0 | 172.5 | 156.5 |
(出所)厚生労働省『平成23年賃金構造基本統計調査 (初任給)』
ただし、よく見ていただくとわかりますが、大卒と大学院修了は初任給がじわりと上がっていますが、一方で高専・短大卒と高校卒は横ばいもしくは下がっている傾向が見られます。学歴別で見た場合、今後も大卒や大学院修了者の給料は上がっていく可能性があるといえます。
※1:2011年6月分の賃金「所定内給与額(基本給+諸手当)-通勤手当」をもとに調査されている。
■産業別に見た場合、どの業種が初任給は高い?
それでは次に、産業別に見た場合の初任給はどうでしょうか?平成23年の大学卒の初任給をもとに、産業別に見た場合、圧倒的に初任給が高いのは、「学術研究、専門・技術サービス業」で25万1,900円となっています。いわゆる経営コンサルタント業、士業、広告業などが該当してきます。次に高い業種は、「情報通信業」になります。22万4,200円となっています。こうした産業は、その人の能力・手腕が問われる業界といえ、優秀な人材を確保すべく、給料が高めに設定されていると想定されます。一方、最も低いのは宿泊業・飲食サービス業になります。デフレ下・足元の経済情勢が悪いことも影響していると想定されます。他の産業は、<表2>をご参照ください。
<表2:産業別初任給(大卒、男女計、単位:千円)>
平成23年 | 平成22年 | 対前年増減率(%) | |
産業計 | 202.0 | 197.4 | 2.3 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 240.9 | 206.4 | 16.7 |
情報通信業 | 224.2 | 211.9 | 5.8 |
生活関連サービス・娯楽業 | 211.0 | 216.3 | ▲2.5 |
建設業 | 199.8 | 198.3 | 0.8 |
卸売業、小売業 | 197.4 | 197.7 | ▲0.2 |
製造業 | 196.9 | 201.1 | ▲2.1 |
教育、学習支援業 | 196.5 | 199.3 | ▲1.4 |
サービス業(他に分類されないもの) | 195.4 | 190.1 | 2.8 |
運輸業、郵便業 | 194.9 | 189.3 | 3.0 |
金融業、保険業 | 194.2 | 188.6 | 3.0 |
医療、福祉 | 194.1 | 192.7 | 0.7 |
宿泊業、飲食サービス業 | 190.9 | 191.9 | ▲0.5 |
(出所)厚生労働省『平成23年賃金構造基本統計調査 (初任給)』
上記にて、産業別の初任給ランキングを見てきました。ここで注意点を話しておきます。平成23年には「学術研究、専門・技術サービス業」が初任給が最も高いと話をしましたが、平成22年を見てみると情報通信業や生活関連サービス・娯楽業の方が高いことが分かります。当然のことながら、その産業の動向によって大きく変化しますし、海外の動向に影響を受ける業種であれば為替動向なども影響してきます。ようは毎年変動があり、初任給ランキングだけを見て行きたい業種を判断することはよくないということです。あくまで高いか低いかの傾向にとどめるべきといえます。
しかも、初任給ランキングの高い産業がその後の収入の伸びが大きい産業と必ずしも一致しない点にも注意です。例えば、金融業、保険業は初任給は低めですが、勤続年数が長くなるほど収入は一段と高くなる業界といえます。そのため、初任給だけではなく、その後のキャリアパスや生涯賃金なども考慮して「最も行きたい」業界・企業を決めるべきといえます。
最終的にはやりたい職業を行うのが一番です。給料だけに目が行き、すぐに離職してしまうのでは意味がありません。また、給料が高い業界の中には、年俸制であったり、残業が多いなどといった側面がある場合もあります。ご自身のキャリアを積むうえで、一生で最も考えなければいけない選択肢になりますから、是非学生さんだけでなく、保護者の皆様も交えてどのような人生を歩みたいのか、そのためにはどうすればよいのか話し合っていただければと思います。
※当コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的としたものになります。銘柄や金融商品の選択、投資判断の最終決定は、ご自身の判断でなされるようにお願いいたします。
本コラムは、スキラージャパン株式会社ホームページ『FPコラム』に掲載したものを手直ししたものになります。
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