日経新聞読み方講座【初級編①】『マーケットの用語と意味を知ろう』
伊藤亮太(いとう りょうた) 現在、スキラージャパン株式会社取締役副社長。 CFPR、DCアドバイザー、証券外務員資格保有。 慶應義塾大学大学院商学研究科(専門は社会保障・年金)修了後、証券会社の営業・経営企画部門等を経て2007年11月、「スキラージャパン株式会社」を設立。個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランニングの提案・サポート等を行うと同時に、企業やオーナーに対する経営コンサルティング、相続・事業承継設計・保険設計の提案・サポートを主に行っている。 また、CFPR認定者として、FP受験講座等の講師として活躍するかたわら、大学等で金融や資産運用、年金、保険などの講演も行っている。著書として、『ゼロからわかる金融入門 基本と常識』(西東社)などがある。 公式サイト|伊藤亮太ファイナンシャルプランナー http://www.ryota-ito.jp |
日本経済新聞をどう読んでいいのかわからない。そうした声を学生さんや、セミナーに参加された皆様から頂戴しております。そのため、今回から、日本経済新聞の読み方講座をコラムを通じて展開していこうと思います。
まず初級編から。第一弾として、マーケットの用語と意味について解説していきたいと思います。日本経済新聞朝刊では、毎日14面~15面あたりに【マーケット総合1】が掲載されています。【マーケッ ト総合1】の一番右上部分には『マーケットシグナル』と記載のある部分があります。ここには、日本をはじめとした前日の株価の終値や外国為替、金利、商品(金や原油)価格などが掲載されています。この部分を見ることで、現状日本の株式相場が活況であるのかどうか、また為替の状況、アジア各国の株式市況などを把握することができます。初級編ですので、細かい部分は省いて、主な掲載内容とその用語の意味について解説します。
■マーケットシグナルの用語解説
マーケットシグナル部分[東証1部と記載の部分]を見ると、下記のような順で用語が記載されています。ここでは主な用語について解説します。
<【マーケット総合1】マーケットシグナルに記載されている主な用語>
●日経平均株価
日経平均株価は、わが国の株式市場の代表的な株価指標の一つになります。日経225とも呼ばれ、東京証券取引所市場第1部に上場する銘柄のうち225銘柄をもとに計算された平均株価になります。日本経済新聞社が算出・公表をしていることからこの名称がついています。
日経平均株価は、日本の株式市場全体の動きを反映するともいわれていますが、注意点もあります。なぜかといえば、日経平均は225銘柄の株価の平均値を表しているため、株価の高い銘柄の影響を受けやすいという特徴があるためです。また、輸出企業が多いことから、海外の経済状況にも左右される側面が強い点も知っておきましょう。
ちなみにですが、過去日経平均株価が最も高かったのは1989年12月29日の38,915円。バブル後最安値は2009年3月10日の7,054円98銭。バブル当時は株価が高すぎたとはいえ、当時からみれば現状(2012年6月末~7月初旬)においても4分の1以下となっており、経済状況は芳しくありません。
●東証株価指数(TOPIX)
東証株価指数(TOPIX)は、東京証券取引所市場第一部のすべての銘柄の株価をもとに算出される時価総額(2ページ参照)指数になります。TOPIXは東京証券取引所が算出を行っています。発行済株式総数が多く、時価総額の大きい株式の影響を受けやすい点が特徴といえます。時価総額の大きい企業とは、業種でいえば銀行や通信、不動産などが該当します。内需の代表ともいえる業種において時価総額が大きいといえ、そのためTOPIXは内需の影響を受けやすいともいえます。日経平均株価もTOPIXも数値が大きいほど日本経済は好調といえます。
ちなみに、TOPIXは1968年1月4日を100とした場合の時価総額の変化を表しており、2012年6月4日には、約29年ぶりの安値を付け、バブル後最安値となる695.51(終値)となりました。
●売買代金
売買代金とは、約定株価(売買された株価)×売買成立株数で表されます。簡単にいえば、取引された金額の総額を表します。日本経済新聞のマーケットシグナル部分では、東京証券取引所市場第1部における売買代金を表しており、2012年6月においては売買代金が1兆円を割れる日が続くなど市場は閑散としています。
なお、東京証券取引所市場第1部の売買代金が2兆円(以前は3兆円)を上回ると売買が活況を呈しているとされます。
●売買高
売買高とは、株式等が売買された数量を表します。出来高とも言われます。一般に、東証1部の1日の売買高が20億株あると活況とされていますが、2012年6月~7月初旬の日々の売買高を見てみると14~15億株などといった状況にあり、活況を呈しているとはいえません。
●騰落レシオ(25日移動平均)
騰落レシオとは、市場の過熱感を判断する際に利用される指標の一種になります。これは、ある一定期間の値上がり銘柄数の合計を値下がり銘柄数の合計で割ることで求められます。日本経済新聞の場合、25日移動平均線と記載があるため、具体的には「東証一部における25日間の値上がり銘柄数の合計÷25日間の値下がり銘柄数の合計×100」で求めることができます。
この値が100%の時は中立の状態、120%を超えると買われすぎ、70%を割ると売られすぎと判断されます。例えば、2012年7月6日における騰落レシオは132.17%となっており、買われすぎている側面が見受けられ、一旦調整が起きる可能性があるとも判断できるわけです。
●時価総額
時価総額とは、一般的に上場企業の企業価値を表す指標ともいえます。発行済株式総数×株価で算出されます。日本経済新聞のマーケットシグナル部分における時価総額とは、東京証券取引所市場第1部全体の時価総額であり、1部上場企業の価値を合計したものになります。1989年12月のバブル時には東京証券取引所市場第1部の時価総額は最大で590.9兆円もあったわけですが、2012年7月6日の終値で換算した時価総額は、7月7日の日本経済新聞朝刊のマーケットシグナル部分を見ると270.3兆円となっています。22年ほど前の半分にも満たない状況となっているのです。
ちなみに、2006年末の時価総額は538兆円。たった5年足らずで、米国発の金融危機、欧州の債務危機を主な要因としながら、半減したといえます。
次回もシリーズものとして、日本経済新聞の読み方講座を展開していきます。
本コラムは、スキラージャパン株式会社ホームページ『FPコラム』に掲載したものを手直ししたものになります。
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