4月12日は父の誕生日だった。
お酒と酒ケーキを送ったのだけど、珍しく「届いたよ」の連絡がすぐにこなかった。
誕生日祝いでお出かけでもしているのだろうと思ったけれど、夜になっても電話もメールも来ない。
夜11時近くになって、姉から電話が。
お祝いのお礼の言葉に続いて、「実はさぁ…」と切り出した。
そもそも父へのお祝いのお礼はいつも母からかかってくるものなのに、
電話が姉からだったことに、僅かながら違和感を感じていた。
「実はさぁ…」という言葉はその違和感に呼応した感じがした。
なんでも父は気の毒なことに自身の誕生日当日に手術をしたらしい。
大腸ポリープを切除したのだという。
悪性のものである可能性もゼロではないので、
切除した組織の病理検査が行われるらしい。
電話が母からでなかったのは、一日父に付き添って、
病院から帰ったばかりでおなかがすいていて、とにかく何か食べたかったことと、
父のことを説明すると涙がでちゃうかもしれないから、とのことだった。
なんせ、大腸の手術なので、父は絶食中。母は忙しかったのと気が咎めたのと合わさって、
自分も今日は一日まともに食事をしていなかったらしい。
明太子であったかいご飯を食べると、姉が持った受話器の向こうから聞こえてきた。
「ゆずちゃんも食べる?」と孫に聞いている。明太子とあったかいご飯の組み合わせにNoというわけがない。
遅い時間のありあわせの食事も、孫のお供があれば楽しい食卓になるはずだ。
父の病状は特に今、泣くほど心配をするようなものではないのだけれど、
あの年になるまで、盲腸以外は病気などしたことがなかった人が、
一人心細い思いで病院にいると思うと、母としては胸が痛むものがあるのだろう。
私としては父の状況より、母の方が心配だ。
病理検査で悪い結果が出て、父が入院や大掛かりな治療が必要となれば、母のことだから、根を詰めた看護をするはずだ。
父には悪いが、私は母のために、検査の結果が良好なものであることを祈っている。