昨日、ローストビーフを作っていて、出来上がった肉の塊をスライスし始めたら、高校野球を見ていた次男がそばにやってきて、「つまみ食い、つまみ食い」と言いながら、まな板の前で口をパッカーと開いて立っていました。良い年をして、と可笑しかったけれど、お肉の切れ端を口に入れてあげました。「うんまーい。もう一つ。」それでもう一つ、少し大きいのを口に入れてあげたら満足そうで、二人で少し笑いました。
思い返してみると、子育て中の私は、本当に鬼の形相で、ちび助だった息子たちと、こんな余裕は一切無かったように思いました。おやつも手作りしろ、という母親に、文句も口出しもさせるもんか!!という勢いと怒りで作っていたのですから、おやつを楽しむ、なんていう雰囲気ではなかったのでしょう・・・きっと。
夏はスイカ、冬は山盛りみかんにおせんべい、リンゴ丸かじり、ダッチオーブンで焼いた焼き芋。梨とかパイナップルは朝のうちにカットして冷蔵庫に入れておいて、とにかく段取りと先取り計画、下処理で廻していた気がします。果物は、手間のかからないおやつとしてずいぶん利用して食べたなぁ、と思います。
もう少し、たとえ母から何と言われようとも、子供たちとじっくり向き合えれば良かったな、と今にして胸が痛みます。過ぎてしまった時間はもうやり直しはできません。そう思うと、悲しさと慙愧の念がこみあげて涙がこぼれそうです。
でも、そんなおやつ事情でも、息子たちの心には、味覚とか些細なことかもしれないけれど、思い出が残っているのだな、と思えることもありました。
長男が一人暮らしを始めてしばらくたった頃、昼間に我が家にやって来たのです。海外出張前で床屋さんに行ったり、予防注射をしたり、のついでだったようでしたが、別に我が家に用事があったわけではなく、おやつが食べたい、と言うのです。テーブルにあったりんごと柿、両方食べたいと言い、焼き芋も食べたい、と言いました。ダッチオーブンの焼き芋、それに果物の皮をむいて、飲み物のリクエストはココアでした。バンホーテンのココア。これも息子たちは好きでした。この時、のんびりおしゃべりしながら長男とおやつタイムを過ごしたのでした。
ココア好きだったよね。口の周りを茶色くして、3人でフーフーしながら飲んでたね、と話したらそんなこともあったかもしれない、と笑っていました。
長男のおやつ訪問と次男のつまみ食いおねだりは、あんなタイムトライアルみたいな子育てしかできなかった私だったけれど、甘える対象としての私、母が少しは残っていたのだな、と感じて少し慰められる思いがします。
久しぶりに、天板ケーキでも焼こうかな、と思ったけれど、多分食べるのは私一人になる可能性が高いので・・・やめにしました。
今の、そしてこれからの息子たちと、ゆとりを持って大人の親子関係を作っていきたいです。幼かった彼らの心にどんな影響があったのか、願わくは、それらを乗り越えてより深い絆を結びあえますように。そして彼らが安心して羽ばたけますように。