みんなの日記‐日記を読む‐

身につまされる想い

2023/05/28 15:51jun
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昨日、映画を見終えて、銀座に行こう、という話になった時、一人そそくさと帰っていった方が居ました。皆さんはSちゃん、と呼んでいました。

待ち合わせ場所でSさんを見かけた時、同じグループの仲間の方とは思いませんでした。お一人だけ、腰が曲がっていて、猫背でした。ノーメークにゴマ塩のショートヘアで、なんだか沢山荷物を持っていらっしゃいました。みんなはそれなりにちょっとだけオシャレをしていたと思うのですが、彼女の出立は、黒のぺたんこズックに黒のストレッチパンツ、そしてTシャツにジャンパーでした。

Sさんの大荷物の理由は別れ際にわかりました。全員にプレゼントを持ってきて下さっていたのです。リンツのチョコレートのギフトボックスに大きなシュークリームが3個入っていました。・・・そりゃあ大荷物になるわけです。

私までいただいてしまい、恐縮してお礼を言いながら地下鉄の入り口でお別れしたのでした。

ライオンでビールを飲みながらSさんのことが話題になりました。
彼女はテレビでも何回も取り上げられている、池袋、我が家のすぐそばの人気飲食店の店主の奥様でした。私も行ったことがあるお店でした。昔からあるお店で、彼女たちは2代目なのだそうです。

お姑さんにさんざんしごかれながら、お店の仕事と家事、子育てをずっとしてきたそうです。あんなに腰が曲がってしまったのは、重たいビールケースを運んだり、お座敷の雑巾がけや店舗の掃除をやり続け、さらにテーブルの片づけとか、仕込みの手伝いとか、とにかく休む間もなく動き回っていたからだ、と皆さんは話していました。お姑さんとのことでは、泣きながら相談されたことも一度や二度ではなかったと言っていました。彼女はお店の切盛りをしながらお姑さんを何年も介護して見送り、これでも漸く外に出れるようになったのだ、と皆さんは言っていました。長らく、こういう集まりには全く参加できなかったそうです。お姑さんがお店に出ない夜の時間に皆さんが予約を入れて、顔を見に行っていた、と聞きました。

気配りの人なのですね。あのシュークリームは常連さんのお店の物なのだそうです。そして美容室も高齢のお婆さんが営業しているお店だそうで、そこがある限りは通うのだとか。彼女が本当に辛いとき、その美容室で寝てしまっても、寝かせてくださっていたそうです。お茶も飲ませてくださって、ハンドクリームも塗ってくれたお店なのだそうです。

今日のスタイルもあのままお店に直行して、エプロンをすればすぐにお店に立てるからではないか、と話していました。戦闘服。オシャレなんて考える余裕は無いのです。

皆さんは、趣味を持って、自分の時間、楽しみに人生を使ってほしいけど、お店が大繁盛していて、忙しくてそれだけで精一杯なのだろう、とも言っていました。


お店や会社を経営していて、子供が居れば自分のことなど、二の次、三の次・・・ましてや趣味なんて考えることすら無いのだと思います。彼女の話を聞いて、私は昔の自分のことが思い出されて本当に胸がつまりました。映画だって時間をこじ開けて、みんなに会いに出ていらしたのでしょう。終われば脱兎のごとく帰っていく。

何年か前に乳癌の手術をしたそうですが、年末年始のお休みだけで退院して、お店に出ながら治療を続けたって・・・私と同じではないか!!


彼女からいただいたシュークリームを教会から帰っていただきました。

私の親友とは小、中と同窓で、一緒に日本舞踊を習い、Sさんもお名取りだと聞きました。結婚によってその後の歩みはずいぶん違ったものになりました。でも彼女は愛情と忍耐で無我夢中で頑張っていらしたのでしょう。

私は祈りました。そういう暮らしをし続けていると、それ以外に気が回らないし、それが当たり前になってしまうのです。私は大きな病気を繰り返し、ようやく生活が変わりました。強制終了だったのです。でも、そんな辛い経験はしてほしくありません。休む、仕事から離れる、それも不可欠なことなのです。Sさんが守られますように。


彼女のご主人はお姑さんが亡くなってから、彼の姉妹や親せきに対してはSさんを擁護してくれたそうです。そしてお友達の皆さんが予約すると、歓迎してくれて、Sさんも少しは一緒に加われるように配慮もして下さるのだそうです。人の募集もしてくれているそうですが、なかなかそれはうまくいっていない、とも話していました。

Sさんが、元気で少しでも穏やかな時間をご主人と過ごせますように。
リンツのチョコは大好きです。楽しみながらいただきます。シュークリームも美味しかったです。ちょっと塩味があるシュークリーム。
人生は甘いだけではありませんね。
Sさんがお元気で幸せでありますように。

jun


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